コラムColumn

グリーンキーパーのひとり言71

インターシーディング2

東京オリンピック・パラリンピック開催まで残り1年を切り、来年の夏に思いを巡らせるこのごろですが、今年も残暑と台風・・・楽な年はありません。
タイトルが「2」となっているのは、同じお題で一度、14年前の2005年に書いているからです。当時の文章の中に「埼玉県のような夏暑い地域でも、年々ベント志向が強くなり、(ベント・コーライの2グリーン)で営業してきたゴルフ場が、次々とコーライのベント化を進めています」というくだりがあるのですが、ここ数年で様相が一変しています。
各コースが耐暑性の高い「ニューベント」に変換してきたにも拘らず、内陸の猛暑ではベントグラスの維持が困難と考えて、1面を暖地型の「バミューダグラス」に再転換する動きが加速しています。これは過去のコラムで述べたように、同じ暖地型でもコーライ芝よりは仕上がりが早く、管理次第では最盛期のベントグラスよりも硬さとスピードが出せる利点があるためです。まだまだ我々キーパーの中でもバミューダの管理技術は試行錯誤の段階で、必ずしも好結果を招いていませんが、毎年「生きるか死ぬか・・・」の過酷な試練をベント1グリーンのコースが強いられていることを考えると、2グリーンのコースでは、当たり前の原点回帰だと思います。

  • ベント1グリーンの当クラブ

  • 2グリーンのコース

  • 蒸れ防止のターフファン

日本独自の2グリーン文化は、著名なコース設計家である井上誠一氏らによって確立されたもので、高温多湿の気候の中で、夏場は暑さに強いコーライ芝のグリーンを使用する方法です。
本来ゴルフ場は、最終ターゲットのホールカップに向かって目標を絞り込むレイアウトが王道ですが、2グリーンの設計では、樹木やバンカーを利用し、違和感なく使用中のグリーンに目線が行くように工夫されています。しかし狭い土地に制約の多い日本では、1グリーン分の面積に、むりやり2グリーンを並べたようなコースも多くみられるようになりました。
さらにコーライグリーンは、夏場だけ使用するための片手間の管理では、スムーズな転がりやスピードを出すことができません。このことがプレーヤーのベント志向に拍車をかけ、2グリーンのコースからコーライグリーンが激減することとなったのです。
ただし、「コーライ芝がグリーンに適さない」という考え方に私は賛同していません。なぜなら、コーライ1グリーンのコースで、惚れ惚れするようなグリーンに、日本各地で出会っているからです。むしろタイではバミューダの1グリーンが当たり前のように、日本でもコーライ1グリーンがもう少し早い段階で普及していれば、我々の業界も今とは違った姿になっていたかもしれません。

  • 新型インターシーダー

  • 機械の構造

  • 種まき風景

ここでベントグラスの1グリーンに新しい種子を入れていく「インターシード」について再度書こうと思った訳は、画期的な新機械を導入したからです。
1グリーンを使用しながらのニューベントの定着率の低さは、何度も話題にしてきましたが、その理由の1つは「種のむだ播き」です。たとえ発芽してもグリーンで活着するのは作業で開けた下穴に運良く落ちたものだけで、従来は穴に入れるために、定着数の何倍もの種子を落とさなければなりませんでした。
今回使用する種播き機は、自分で開けた下穴に種を的確に入れていく優れもので、穴の周りにむだ播きがありません。通常インターシードでは、1㎡当たり10g前後の種を落としますが、今回同程度の効果を期待すると、2~3gで済む計算となります。

  • 播種直後(2方向)

  • 目砂散布

  • ブラシすり込み

この後1週間から10日程度で発芽が確認され、2グリーンのように養生期間が取れませんので、低刈りや踏圧に耐えたものだけが生き残ります。
来夏開催の東京オリンピックも様々な議論があった中で、真夏にベント1グリーンでの開催となります。耐暑性の高い品種、春から仕上げてきた成果がギリギリ引っ張れる7月末、ということを考え合わせても、条件的にはかなり厳しいと言えるでしょう。何とか日本の高い管理技術をもって、成功してほしいと願っています。

  • リニューアルしたレストラン

  • 清澄御膳

  • 名物おつまみカシラ炒め

この夏当倶楽部では、レストランを大々的にリニューアルしました。ホールの絨毯を張替え、テーブルクロスも一新したことで、さらに明るく落ち着いた空間からコースを一望できます。メニューもそれぞれグレードアップし、空間に相応しいものとなっています。
まだまだ努力が必要な面も多々ありますが、コース管理を含め、スタッフ一丸となってお客様をお迎えしたいと思っています。

清澄ゴルフ倶楽部 グリーンキーパー 野呂田 峰

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