コラムColumn

グリーンキーパーのひとり言43

ピンポジション(ホールロケーション)

先日、春一番が吹き、花粉症の方々には大変な季節がやってきました。新年を向かえ あまり明るい話題もないままバタバタしていたら早3月!
そろそろ「ひとり言」でも・・・ とバックナンバーを読み返すと、なんと第一話「カップ切」は平成16年でした。7年間で43話目が、「継続は力・・・」なんて言うのはおこがましいのですが、懐かしくみていると、当時は裏方(コース管理)目線の強い文章で、一般のゴルファーには伝わりにくい内容も多いことを発見しました。

  • 清澄のピンポジション例

  • マスターズの位置決め①

  • マスターズの位置決め②

ゴルファーの苦情(言い訳?)の中でもよく耳にするのが「グリーンのカップの位置が難しい」というものです。
これについて7年前の私は「天候、お客様の組数、曜日等を加味しながらバランスよくホールロケーションを決めていきます。」なんてサラリと言っています。(笑)
ところが、私が冷静にみても、ピンポジションの苦情は他のゴルフ場よりも多いと感じています。そこで今回はその理由をもう少し詳しく考えてみることにします。
そもそもグリーンのホールカップはゴルフを面白くするためだけでなく、グリーン面の芝のダメージを軽減するためにも、なるべく離れた位置に毎日切り替えます。そして、この「位置」が実は「切ることができる位置」であると認識されているプレーヤーは、そう多くはないのです。

  • 7番ホールのグリーン図面④

  • プレーヤーのイメージエリア⑤

  • マウンドと傾斜を追加⑥

  • 本当の3つのエリア⑦

  • 2週間分のピンポジション⑧

  • 単純な傾斜のグリーン⑨

清澄GCの代表的なグリーン(7番ホール)の図面で説明をしたいと思います。当倶楽部は平均700㎡の大きなワングリーンのため、プレーヤーの「カップを切ることができる」イメージは⑤の図面のエリアではないでしょうか?
ではそこに⑥図のようにマウンドと傾斜を書き込んでみましょう。するとこのグリーンは、比較的平らな3つの面を傾斜でつなぎ合わせたものであることがわかります。このことからピンポジションに成り得る本当のエリアは図⑦のようにかなり限られてくるのです。
よく「何でこんな大きなグリーンの端っこに切るの!」というお怒りの声をお客様やキャディーさんから耳にするのですが、このようなやむ負えない事情があることも理解して頂けると幸いです。図8に、休場日を除く2週間分のピンポジションを示しましたが、全て上記のエリアにバランスよく配置されていることがわかるでしょう。
「でも、よそのゴルフ場はこんなに意地悪じゃないよ!」という意見にも解説を・・・ 図⑨は某ゴルフ場の7番ホールですが、緩やかな傾斜の受けグリーンで、左の小さなマウンド以外全てのエリアにカップを切ることが可能です。その結果、総面積は500㎡で清澄よりも小さいにも関わらず、実用面積では約300㎡と逆転するかたちになるのです。このグリーンを単純でつまらない・・・と考えるか、スコアがまとめやすく楽しい・・・と思うかはプレーヤー個人の価値観なので、私には何とも言えません。

  • 7番グリーン脇より

  • 7番グリーン正面より

  • 7番グリーン中央尾根

ピンポジションの難易度は、グリーン周りの形状にも大きく左右されます。バンカー越えで奥行きの少ない7番のグリーンは、プレーヤーに「勇気あるショット」を要求しています。このように、清澄GCには中央付近にカップを切れないホールが多いのが特徴です。
そんな中でも18ホール全てが難しくならないようにホールロケーションを決めています。がしかし、人間の脳に残る記憶とは厄介なものです。簡単なホールや特徴の少ないピンポジションはインプットされず、アプローチに苦労したり、3パットしたホールは鮮明に覚えているのです。そしてその結果が「ひどいピンポジションばかり・・・」という苦情につながります。
ゴルフコースは、例えパー72が同じであっても、設計やコンディションによって全く難易度が違ってくるのが醍醐味です。難しいコース、厄介なピンポジションを攻略したときの快感は格別です。
清澄ファンのお客様と話をするとき、苦労話を楽しそうにする方(少しM?)が多いような気がします。自分で決めたピンポジション(罠?)に私自身がひっかかることもよくあります。はたして、コースと喧嘩せず、対話できるようなプレーヤーになれる日は来るのでしょうか?

清澄ゴルフ倶楽部 グリーンキーパー 野呂田 峰

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