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グリーンキーパーのひとり言21

景観池の安全対策

グリーンキーパーにとって長い夏が終わり、秋はゴルフシーズンであると同時にコースメンテナンスに集中する時期でもあります。
忙しさを言い訳に「ひとり言」も少し間が空いてしまいました。何か面白い話題がないか考えていましたが、景観池に今回ちょっと変わった物を設置したので、その裏話をしようと思います。
ゴルフ場には、ハザードとしての役割と景観上の目的で多くの池があります。プレーヤーの立場では、池に落とすと大事なボールが無くなった上に1打罰までもらって踏んだり蹴ったりです。

  • ウォーターハザード①

  • ウォーターハザード②

今年の夏、栃木県内のゴルフ場で、お客様が池で溺れて水死するという痛ましい事故がありました。全国ニュースになったのでご存知の方も多いと思いますが、概要は次のようなものです。
 
「 池に入ったボールを拾おうとした女性プレーヤーが誤って池に転落し、それを助けようとした同伴の女性プレーヤーがゴルフクラブを差し出したところ、引き込まれて一緒に溺れ、他の同伴者も救出を試みたが、結果的にこの助けようとした女性が沈んで水死した。」
 
というものでした。毎日ゴルフ場にいる我々にしてみると、いくら斜面がきつく滑ったといってもすぐに溺れるような池は法律(安全)上考えにくいのです。きちんと造成されたゴルフ場では岸辺の水中に1m程度のステップ(歩ける平面)を造ることが義務付けられていて、すぐ深みにはまるようなことはありません。
この疑問の答えは夏の渇水でした。普段なら水中にあるべき安全上のステップが干上がっていて、そこまで降りたプレーヤーがその先のボールを拾おうとして転落したのです。
 
話を当倶楽部に戻します・・・。
 
この事故の後、池の安全対策について倶楽部の幹部で話し合いをしました。とりあえず清澄の池は岸辺に浅いステップがあることと、渇水の時もポンプアップして満水状態をキープしている点を確認しましたが、万が一に備えて救命浮輪を設置することになりました。
安全対策というのは何か事故が起きてから講じられることが多々あり、他のゴルフ場も同じ事を考えたようです。救命浮輪なんてめったに売れない(笑)商品が一時的に品薄状態になったそうです。
さて、安全対策は大事ですが、我々にとってかなり重要なのが設置位置と方法です。
変な所に置くと刈込みなどのメンテナンスに支障があるし、かといって緊急時に使えなければ元も子もありません。

  • 救命浮輪

  • 設置用金具

そこで、ハザード内に専用金具を付けて浮輪を水面より上に浮かせる方法を考えました。
これだと池周りの芝刈りも支障なく見た目もすっきりしています。

  • 設置風景①

  • 設置風景②

  • 設置風景③

しかしこの浮輪は今風に言うと「微妙・・・」です。せっかく設置したのに使って欲しい設備ではないし、もちろん事故が起きても困ります。
我々としては、こういうゴルフ場の姿勢をお客様に感じて頂ければ、救命浮輪15個も無駄ではないのかな・・・と思っています。

清澄ゴルフ倶楽部 グリーンキーパー 野呂田 峰

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