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グリーンキーパーのひとり言31

芝生の害虫

全英オープンも終わり、梅雨明けした関東に本格的な夏がやってきました。
それにしても、リンクス(ロイヤルバークデールGC)の気候は凄すぎます・・・。
とても同じ北半球の夏とは思えません。毎年この大会を見るたびに思うのは、「本当は芝という植物はこういう場所が適地なのだ」ということです。
生物学の世界には、「極相」という考え方があって、一般に植物の生態系に人の手を加えない最終植生を表す言葉で、日本のブナ林のような「森林」となる場合が多いです。
しかし、気候的な障害(例えば少雨や強風など)があまりにも厳しいときには森林は形成されず、草原が極相となる土地も多く存在します。 リンクスというゴルフ発祥の地は、芝のような草原にしか成り得なかった厳しい気候といえるでしょう。砂地に小動物が掘った穴が強風でえぐられ、「バンカー」が生まれたというエピソードも、私のようなマニアを喜ばせるものです。何とか一生のうちにリンクスを見てみたい・・・そう願いながら今年も日本の蒸し暑い夏を迎えています。

  • マメコガネ成虫

  • セマダラコガネ成虫

  • シバオサゾウムシ成虫

  • スジキリヨトウ成虫

  • スジキリヨトウ幼虫

  • シバツトガ幼虫

さて、今回の話題は芝生の害虫です。一般の方々のイメージでは、野菜や果物などに比べてあまり美味しそうではない(笑)芝生を食べる虫なんてそんなにいないのでは・・・。 と思われているようですが、実はかなり強敵なのです。
もちろん自然に易しいコースメンテナンスを目指していますから、 少々の食害に目くじらを立てているわけではないのですが、ゴルフ場は広いので、大量発生すると張替え補修のような大問題になってしまいます。
芝生の害虫は大きく3種類に分類することができます。
①鱗翅目(シバツトガ・スジキリヨトウ・タマナヤガなどの蛾の類)
②鞘翅目(コガネムシ・シバオサゾウムシなどの甲虫類)
③半翅目(スナコバネナガカメムシ・チガヤシロオカイガラムシなど)
 
食害の多くは幼虫によるもので、蛾の幼虫は主に葉を食べ、コガネムシの幼虫は根を食害します。先程もいったようにある程度までは 共存共栄?でよいのですが、芝が枯れるほどの被害となると防除せざるをえません。
防除方法としては、様々な殺虫剤によるものが最もポピュラーで、その他に天敵を利用する方法や、フェロモン等による誘引剤も活用されています。

  • 様々な殺虫剤

  • 天敵センチュウ

  • 誘引トラップ

ゴルフ場用の殺虫剤は、私が知りうるこの20年でも中心となる剤が様変わりしました。
以前は、有機リン系や合成ピレスロイドのような神経毒がほとんどでしたが、 環境問題が叫ばれる昨今では、人間を含めた周辺生物に影響の少ない剤が増えてきました。
芝を食べないと効かない食毒剤や、幼虫特有の脱皮を阻害する剤などが主な例でしょう。実際に散布作業をしていても昔のような 刺激臭の強い殺虫剤はほとんどなくなったことを感じています。
十年ほど前に関東でも大問題となったシバオサゾウムシ(外来種)を防除するには天敵となるセンチュウ剤が非常に有効でした。しかし値段が高価だったことと、その後 ニコチノイド系の新剤が相次いで登場したことで、この天敵農薬を利用する機会もほとんどなくなりました。
また、最近の害虫発生の特徴として、温暖化の影響からか、発生周期が明確ではなく1年中ダラダラと続くので、防除のタイミングが難しくなってきています。
そのためここ数年は、夜間に成虫、幼虫問わず様々なステージの害虫密度を落とす目的で薬剤散布をしています。食害が出た箇所を追いかけて防除するよりもかえって安上がりで効果が高いことを実感しています。

  • 散布風景①

  • 散布風景②

  • 散布機械

夏場はゴルフ場でも害虫密度がピークを向かえます。同時に旱魃により乾燥害もコースのいたるところに出るので、虫害との見極めが肝心です。
虫の食欲が増すのに反比例して私の食欲がなくなります・・・。

清澄ゴルフ倶楽部 グリーンキーパー 野呂田 峰

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